#3完全犯罪【2】

【第2部】#3完全犯罪【2】

私は松岡と一緒にプロダクションを立ち上げた頃、松岡が、大手AVメーカーに、私達のプロダクションに所属する女の子達を面接に連れて行く度に、女の子達が未成年では無い事を証明する為だと言われ、そうした大手AVメーカーで女の子達の身分証を毎回コピーされ、その身分証を元にそうした大手AVメーカーから直接私達のプロダクションの女の子達に連絡をされてしまい、所属する全ての女の子達が次々に引き抜かれてしまったのだ。挙句の果てに、そうして私達のプロダクションに所属していた女の子達が、松岡が連れて行った大手AVメーカーから次々とAVデビューをするという、あまりにも露骨な引き抜き工作をされてしまったのである。
実際松岡は、かなり沢山の有望な女の子をスカウトし、大手AVメーカーに連れて行ったのであるが、その全ての女の子達があからさまにそうして引き抜かれてしまったのである。
その上、その所属していた女の子達に、美容整形費用や当面の生活費までも貸していた為、松岡はかなりの貯金があったのだが、その貯金もほとんど無くなってしまった為、私も松岡の仕事が軌道に乗るまでのしばらくの間、銀座のクラブで働く事にしたのであった。

私は銀座のクラブに於いて、偶然、映画会社の【東宝】の当時ビデオ企画室室長である別所氏の席で別所氏から、『いい?ストレートに言うよ。君、もしかして凄く困ってる事があるでしょう。僕が君の願いか若しくは君の彼氏の願いを叶えてあげるよ。どちらでも構わないよ。例えば君がスターになりたいだとか、彼氏の仕事とかそんな願い事でもいいし。とにかく1つは必ず間違い無くやってあげますよ。これは本当だから安心して。』と、いきなり単刀直入にそんなビックリする様な話を持ち掛けられたのだ

だがその時に持ち掛けられた【東宝】の別所氏の話は、これまで相談した私の知人や友人達と決定的に違っている箇所があった。それは、其れまでの相談相手からは、あくまでも私だけの事ならば助けになってやる、という話しか無かったのだ。そして彼氏の方【松岡の事】には何も手助けする様な話をしないどころか、【とにかく松岡とは離れろ】といつも言われ続け、【そいつは放っておけ。】だの【私に近付こうとしたら松岡を徹底的に潰す。】だのと私の気持ちを全く無視した私が全く呑む事が出来ない提案しかして来なかったのである。
だが今回は彼氏【松岡】の願いでも良いという松岡への救済をも提案をして来たのだ。私はその事がとても嬉しかった。当然なのかも知れないが、私の知り合い達は皆、私だけなら力になってやらないでもない、とは言っていたので、私だけならまあ何とかなるだろう、とその頃は思っていたのだ。長い期間仲が良かった
友人達でさえ誰も私達の意見を全く聞き入れてはくれず、それどころか、私の話しさえ遮り、一方的に彼らの言い分だけを話し、それについて私が何か意見をしようとしても、【いいから最後まで話を聞きなさい。人が話してる時に途中で中断させるのは失礼だ。】と怒って言うくせに、彼らが話し終えた後でさえも、私の話を全く何も聞こうとはせず、『 君の意見なんて聞いて無いよ。また松岡を何とかしてくれだとか、下らない事しか言わないんだから。そんなどうしようも無い奴と一緒にいる事自体、誰だって怒るよ。とにかく君の下らない言い分は聞かないから。僕の言う通りにするかどうか、ただそれだけだよ。』と、私達の気持ちなどまるで考える事無く更に皆、それまでに見た事が無い程感情的になり、必死な形相で彼らの意見を一方的に捲し立てて押し付けようとするのみだったのだ。私は友人達がそこまで感情的になっているところを見た事が無かったので、『何をそんなに急に興奮して一方的に話すのよ?おかしいんじゃない?気でも狂ったの?』としか思えなかった。それも誰も彼もが皆、そっくり同様な態度であり、相談を始めてからただの1人も、冷静に私の意見や気持ちを聞いてくれる事が無かったのだ。
それなのに、全くの赤の他人しかもここまでキチンとした会社の社会的地位のある方からの松岡への提言は初めてだという意味である。この後述べるが芸能界の人物からならばその前にも一度あったのだ。

映画会社【東宝】のビデオ企画室室長の別所氏は、『で、どうするの?君の願いを叶えればいいの、それとも彼氏の方?』と再度ストレートに私に問い詰めて来たのだ。だが、私としても映画会社【東宝】のビデオ企画室室長の別所氏という【助け舟】の出現は全くの想定外であり、何分にも突然の出来事であったので、咄嗟には良い案も思い付かず、『勿論、私の。と言いたいところですが、今、私は大変な状況の最中にあってそれどころでは無いんですよ。実は或るとんでもなく大きな秘密を知ってしまった事で、とんでもない事になってしまっていて。』と言いかけた時に、別所氏はすかさず私に、『君はひょっとしてAV業界にも詳しいんじゃない?僕は、大手AVメーカーの社長とは勿論、みんな仲が良いよ。大手AVメーカーの社長なんてみんな良く知ってるよ。』とズバリと切り込んで来たのだ。。『えーっ、何ですって!?それは本当ですか?』と私は、あまりの驚きに聞き直した程だ。

私はこの頃、何故私がこの様な国家規模の大掛かりな包囲網を敷かれているのか真の理由が分かって無かったのだ。【 第一部 】で少し述べたが、私はその頃、AV業界と芸能界のとんでもなく大きな秘密を知ってしまったが故にその様な事態に陥ってしまったのだと思っていたのだ。だがそれはそれで実際に大きな秘密だった為、それも勿論一理というよりも大きな理由では或るのだが。そのとんでもなく大きな秘密とは、有名な水着のグラビアアイドルなどが、アイドル活動をしている同時期に変装をしてAVに出演している、若しくはAV女優が美容整形をしてプロフィールも大幅に変えてメジャータレントになっている事である。【詳しくはまた後程別の章で述べる】と云った事情を少しだけ話したのだ。

『そういった理由で、私がこの秘密をたまたま知ってしまった為に、この様な大掛かりな嫌がらせの包囲網を敷かれている様なんですよ。そのせいで松岡まで巻き込んでしまったようで正直、酷く責任を感じておりまして。
大手AVメーカーといくつかのAVプロダクションの間には【業界の輪】というものが有るらしく、私達は、その【業界の輪】の中に入れてもらえないばかりか、AVメーカーがプロダクションに所属する女優と出演契約する際に、その女優が18才以上である事を証明する為に身分証を提出するんですが、その大手AVメーカーの単体で松岡が契約をしたその松岡の事務所に所属の女優本人のところに、その身分証を見て大手AVメーカーの者から直接連絡が来て、松岡がスカウトして事務所に所属させてやっとAVメーカーとの単体契約に漕ぎ着けた女優達を全部引き抜かれてしまっていて、その大手AVメーカーと揉めてるんですよ。そして実際に、そこの大手AVメーカーに連れて行った女優達が皆、引き抜かれてしまって、完全に私達の事務所が狙い撃ちされて潰しにかけられている状態なんですよ。
それでその大手AVメーカーとは揉め事の真っ最中ですし、しかも私が松岡の事務所を手伝っている事を、その大手AVメーカー側から私が所属するプロダクションにバラされてしまって所属するプロダクションと私とで大喧嘩になってしまってますし、その事で私は本当に腹が立っていて。私としては松岡の事務所に所属していた女の子を片っ端から引き抜かれて事務所を潰されている事以上に、AV業界とグラビアや芸能界との秘密をたまたま私が知ってしまったが故に、この大規模な包囲網を敷かれ、その後ずっと付きまとわれて、どこに行っても嫌がらせをされている事にも本当に頭に来て憤り、もう精神的にも参ってしまっている状況なんですよ。そんなゴタゴタした大変な状況の中で、事務所を立ち上げてから松岡が貯めた300万円あった貯金も底をついてしまい、仕方無く私もクラブでバイトをしている様な状況なので、こんな状況の中では、自分の事をどうこうというよりも、取り敢えずは、生活を立て直して一息ついてから、じっくりと考えたいんですよね。 それでまずは松岡の事務所を【業界の輪】の中に入れて貰って、まともな事務所として認めて貰ってちゃんと仕事が出来る様にして頂きたいですね。今話した様に聞いた話によると、いくつかのAVプロダクションとAVメーカーの間では先程述べた様に、【業界の輪】というものが有り、その輪の中に入れて貰って無いプロダクションや新規参入のプロダクションは、AVメーカーに営業に行っても弾かれてしまうらしいんですね。それに【業界の輪】に入って無い事務所は潰してしまおう、という事にもなっているだとか。
それにその【メジャーアイドルがAV女優として同時期に活動をしている】という秘密を知ってしまった事による嫌がらせの包囲網が余りにも酷い状況ですし、こんなとんでもない状況に引き込んでしまったまま、松岡を放って私だけ勝手に出て行く事はさすがに出来ませんし。それと、松岡の相談相手が私だけというのも松岡にとっては不安でしょうから、誰か力のある方に松岡をバックアップして頂きけると私としても安心なんですけどね。松岡は、とにかくスカウト力や営業力はありますし、礼儀正しくて性格は良いですから。』と、ごく軽く事情を説明したのだ。
すると別所氏は『 そうだね。【 業界の輪 】みたいな物は確かにあるよ。なぜかって言うと、いくら大手AVメーカーでも毎月リリースする単体の枠はそう多くは無いし、それに単体新人女優の枠だって毎月1人、2人だからやっぱりキチンと女優を管理出来るプロダクションに任せたいし、新規参入のプロダクションでは、何か変な危ない奴が始めた事務所かも知れないから【 業界の輪の中 】に入れたく無いんじゃないかな。それに長く付き合いが有る信頼出来るプロダクションの方がAVメーカーとしても安心だからでしょう。分かった、じゃあ君の希望としては、彼氏をその【 業界の輪の中 】に入れてあげればいいんだね?そんなの簡単だよ。それに僕はビデオ企画室の室長だから大手AVメーカーの社長なんてみんなよく知ってるし、誰にでも言う事を聞かせてあげる事が出来るよ。取り敢えず大手AVメーカーの何れかの社長に、君達が失ってしまった事務所の運転資金のお金をを出させれば良いのかな?だけど、これまでの揉め事は一切関係無く考えてね。向こうが何か文句を言って来たら、僕がその社長連中に言う事を聞かせればいいだけの話だから。それでえーっと、君達が事務所を立ち上げる為に貯めておいた300万円が無くなってしまったんだっけ。じゃあ、その300万円を誰でもいいよ、大手AVメーカーの社長の誰にでも直ぐに君達に出させてあげるって保証してあげるよ。で、どの社長が良いの?』と出し抜けに聞かれ、私は『 誰と言われても、お会いした事も無い方ばかりですし、一番面倒見が良くて性格が良い社長はどなたなんですか?それと力関係とかはどんな感じですか?』と、尋ねると別所氏は『 そのクラスになるとみんなそれなりに力はあるし、誰でも同じだし誰だっていいよ。あっそうだ、その引き抜かれて揉めている社長で良いじゃない、そこにお金を出させてその後も面倒を見てもらえばいいんじゃないかな。』と言われたのであったが、実際、後でよくよく考えてみたら、その案が一番良かったのだが、その時は私も感情的になっていた事もあり、その上全く予期せぬ、唐突に持ち掛けられた話であり、また咄嗟の事でもあったので、『いや、それはさすがに不味いですよね。』と言うと、『何も不味い事なんて無いし、僕が言えば大丈夫だって。でも君が嫌なら仕方無いね。そうだなあ、じゃあ、気に入らなかったら別の社長に変えてあげるから、取り敢えずは【K】(仮名)というメーカーの中川社長と会って見れば。あの社長はMAX・Aというメーカーの裏の社長もやっているし、AVのケーブルテレビのミッドナイトブルーの会長でもあるから。』じゃあ取り敢えず明日のランチに銀座の僕の会社の横の中華レストランに彼氏連れて一緒に来てね。』と言われたのだ。そして帰ってその事を直ぐに松岡に話し、松岡と【取り敢えずは良かったね】と、お互いにほっとし、喜びあったのだ。

その時に私は、『 でも言っておくけど、別所さんから【 私か彼氏かどちらかの願いを確実に叶えてあげる】って言われて、まず松岡の事をお願いしますって私が言ってあげた事は絶対に忘れないで感謝してよ。』と私が言うと松岡は、『 まあそうだけど、俺はペルシャ【私の愛称】が俺の事を裏切って自分だけが良い思いをしようと考える事なんか絶対に無いと思ってるから。それに俺の方が先にこの状況を何とかしないといけないに決まってるじゃない。女の子は皆引き抜かれて、金も無くなって【業界の輪の中】にも入って無い、どうしようも無い状況なのに。まずは生活を立て直してから自分の事をやってよ。』と私に言ったのだ。

そして翌日、映画会社【東宝】の横にある銀座の中華レストランのランチに松岡と私の二人で、映画会社【東宝】のビデオ企画室長の別所氏に会いに行ったのだ。そこで別所氏は、前日の【君の願いか君の彼氏のどちらかの願いを叶えてあげるよ。】などという【アラジンと魔法のランプ】に出て来る【ランプの精】の様な感じとは打って変わり、ごく普通に冷静な感じで松岡に、『 昨日、たまたま彼女が席に着いて彼女の話を聞いている中で、君達がAV事務所をやっていて、女の子を引き抜かれたり、【業界の輪】の中に入れて貰えないだとかで困っている様だったから、僕はビデオ企画室の室長という立場上、AVメーカーの社長連中はよく知ってるし、【誰か、やり手のスカウトが得意な人がいたら出資したいから紹介して。】なんていつも頼まれてるから、そんなにスカウトがデキる人がいるならちょうど打って付けだったから早速、明日にでも是非連れて来てよって彼女に言ったんだよね。』などと言い出したのだ。
別所氏は続けて『まあ事務所を作って運転資金だので300万円くらいは必要でしょう?君達だって運転資金に300万円用意してたんでしょう?まあ、事務所が軌道に乗る前に女の子を全部引き抜かれて底を付いちゃったって話聞いたけど、AVメーカーの社長にその失った300万円は出させてあげるから、また一から始めれば良いじゃない。松岡君はスカウトには自信があるんでしょう?これからは【業界の輪】の中にも入れてあげるし、大手AVメーカーの社長自らがスポンサーになって松岡君を強力にバックアップするんだから、もう安心でしょう?』と言われたのだ。すると松岡は『何だ、ではスカウト力がある人物を探してたんですね。そういう事か、なるほど、なんか上手過ぎるおかしな話だと思いましたよ。』などと言って、一人勘違いして納得していたのだ。松岡はどうやらこれで、今回の【見ず知らずの人物からの、いきなりの300万円の資金提供】を、ただのラッキーな偶然だと思い込んだのであった。しかも、私達が失った運転資金もちょうど同じ300万円だというのにも拘らずである。【そんな偶然が有る訳無いでしょうが。その上、私が何も事情を話していない内に別所氏の方から『君はAV業界に詳しいんじゃない?』だとか、『君か君の彼氏の願いを叶えてあげるよ。』と言われ、私が『とにかく先に松岡の事を【業界の輪の中】に入れて頂いて嫌がらせをされ無い中で、松岡のAV事務所をキチンと業界に認められた形にしてあげて欲しいし、力のある人物に松岡をバックアップして頂きたい。』と頼んだのだと、あれ程松岡に言っておいたのにも拘らずである。
いったい全く、松岡は何という単細胞な者であろうか。】と、私がここまで松岡の為を思って話したからこそ、今回のこの映画会社【東宝】のビデオ企画室室長である別所氏との話し合いがあるというのに、私はやれやれというより、本当にがっくりとしてしまった。とは言え、昨日の今日の事では有るのだが。

そして更に、『僕はスカウトには自信があるんですよ。いや、でも本当にちょうど良かったですよ。偶然にスカウト力のある人を探してただなんて。でもゆくゆくはメジャータレントの事務所にしてやっていきたいので、出来ればもう一人誰か、キチンとしたメジャータレントの事務所のマネージャーさんとかと一緒に事務所をやって行きたいんですけど。』などと言い出したのだ。すると別所氏は、『昨日も彼女に話したし先程も言ったけど、大手AVメーカーの社長から事務所の運営資金として300万円は確実に出させるからそれは心配要らないよ。
まあその社長と気が合わなければ、別の社長を紹介するから気楽にね。本来はその君達と揉めているとこのメーカーの社長にお金を出させるべきだと思うけど、君達にわだかまりがあるようなら仕方無いからねえ。そんなの僕が言えば、何も無かった事にして君達の面倒を見させる事も出来るんだけどね。そのお金はそれまで君達が失った事務所の運転資金の300万円の様に、君達が自由に使ってしまって構わないんだよ。
だけど、それはそうとメジャーなプロダクションのマネージャーなんかいくらでも紹介しても構わないけど、その人も一緒に事務所で働くとなると、君にこれから渡す事務所の運営資金の300万円から捻出してもらう事になるから、そうすると、本来君達がその300万円を自由に使えるはずなのに、そのお金が減っちゃう事になるから止めた方が良いと思うんだけど僕は。それはゆくゆくでも良いんじゃないの?』と言われたのだが松岡は、『それは全然構いません。生意気だと思われるかも知れませんが、メジャーな事務所のマネージャーと、最初から誰にも馬鹿にされたり舐められたりしない様な、ちゃんとした事務所を作りたいんです。』と言ったのだ。
松岡はその300万円を私達が頂く、というのでは無く、まるでその資金を出資する社長から任された社員の様に、馬鹿正直に、その300万円をすっかり全て残らず、事務所の設立資金に充てようとしているのだ。ただ単に私達に300万円の運転資金をくれるというだけの話であるのに、松岡はまるっきりそう考えて無いのだ。松岡はまるですっかり新しい就職先が決まり、その社長から事業所を頼まれた如きに考えているのだ。これではただの社員に逆戻りでは無いか。

すると別所氏は、『本当にそれでいいんだね?だってその300万円は、本当に君が自由に使っちゃって構わないんだよ。まあ君がそこまで言うのなら、君の事だし僕は全く構わないんだけどさあ、僕のお金じゃないし。それでは芸能界の大御所のヒラタオフィスっていう、女優の島田陽子さんとか工藤夕貴ちゃんとかを育てた平田社長から、誰か一人良いマネージャーを派遣させるよ。その話も彼女から少し聞いてたからそれももう見当をつけておいたんだ。』と言われたのだ。そして『じゃあ、○月○日に、衛星放送のミッドナイトブルーの本社に中川社長が待ってるから会いに行って。300万円は間違い無く出させるし、あとヒラタオフィスのマネージャーの件もその時までに用意しておくから。じゃあ、何かまた問題があったら連絡して。』と言われたのだった。

その後私がいくら言っても松岡は、『 その300万円はいくら頂いたと言っても俺は一円足りとも無駄にはしないし、勿論、使い道や領収書もその運営資金を出してくれる社長に提出するに決まってるだろう。良いじゃないか、これでちゃんとした事務所を作れるんだし、俺が勝手に使う訳にはいかないよ。】と等と言っったのだ。更に『それから別所さんに、【君か彼氏の願いを叶えてやる】って言われたって言ってたけど、全然違ったじゃない。あれはただスカウト力がある人間を捜してただけだって。結局は俺の実力で資金を勝ち取ったんじゃない。そんな出来過ぎた都合の良い話が有る訳が無いと思っていたよ。まあ偶然別所さんに知り合えた事は良かったけどさあ、たまたまだよ、たまたま。』等と図々しく言ったのだった。それで、『あのね、私には別所さんは【彼氏の事よりも、君の願いを叶えた方が良いんじゃないの?】って言っていたくらいなのに、そんな訳無いでしょう。それに揉めている最中のAVメーカーから資金を出させても良いよって言ってるくらいなんだから、和解の為にそっちから頼まれて私に会いに来たんじゃないの?それに結局は【業界の輪】の中に入れてくれるって言われたんだし、失った300万円がちょうど戻って来たなんて偶然の筈が無いじゃない。』と私が言うと、松岡は『そんな事有る訳が無いよ。ペルシャ【私の愛称】は、たまたま知り合った別所さんに俺を紹介しただけであって、俺に会ってみて、【仕事が出来そうだ】と話してて分かったから失った300万円を出させる事に決めただけだよ。別所さんだって【ちょうど君の様にスカウト力がある人を捜してたんだ。】って言ってたじゃないか。だからこれは俺の実力で勝ち取ったんだよ。』と、とんだ勘違い発言をし始めたのであった。いつもそうなのだが、皆、私の相談に乗ったり何かを提示してくれる人は、私に対する話し方と他の人に話す時とでは、何故か全く言う話に変えてしまうのだ。例え私に何か秘密を打ち明けてくれたり、信じられない様な提案をして来たとしても、他の人の前ではこの別所氏の様に、さもごく普通の対応をしていたかの様に見せるのである。つまりそうした話を持ち掛けて来る人々は、私だけにしか裏の顔を見せてはくれないのだ。それを私が彼氏等他の人に話し、その人の前でも同じ話をして貰おうとしても、決して私だけに話した内容と同じ話をしてくれないのである。

その後、別所氏から呼ばれた日時に、衛星放送のミッドナイトブルーの本社の応接室に私と松岡の二人で連れ立って中川社長に会いに行くと、中川社長は『話は全部、別所さんから聞いてますから。松岡君は、スカウトが上手いらしいね。取り敢えず300万円渡すから。もう、引き抜かれたりし無いし、安心して頑張ってね。それからヒラタオフィスのマネージャーには次に会った時に会わせるよ、それで良いかな。』と、あっさりと言われ、私達が呆気にとられる程、すぐに話が終わってしまったのだ。
そしてすぐに松岡は中川社長から300万円を受け取り、ヒラタオフィスの平田社長に挨拶に行き、そこで女優の島田陽子さんのマネージャーをやっていた柳井氏を紹介され、原宿に事務所を構えたのであった。だがその後数カ月で松岡は、AVメーカーの【K】は、大手の中ではレベルが低くて、あんまり売れそうに無い子が契約するならちょうど良いんだけど、メチャクチャ売れそうな子は連れて行きたく無いんだよ、だって勿体無いし、【K】は契約料が他の大手メーカーに比べて格段に安いからさあ。でも【Kの社長がスポンサーだから他に持っていく訳にもいかないし。中川社長は勿論、悪い人じゃないけどさあ、金持ちだしね。だけど他の社長を紹介してもらえば良かったって、正直もううんざりしちゃったよ。取り敢えず一旦辞める為に、前の飯島愛がいたオフィスLに戻るよ。そうじゃないと辞め辛いし。ここで数人の女の子を契約させたし、恩は返したしもういいだろう。あのマネージャーも結局何もしないし、ただ俺があいつの面倒見てるだけで全然いる意味が無いよ。あいつにそのまま事務所やらせて俺だけ辞めるよ。】と言って、せっかく作った事務所を辞めてしまったのだ。全くこれではただ単に数カ月分の給料を貰っただけの様になってしまったでは無いか。余りにもあっさりと300万円もの大金を頂いてしまったからこの様に無駄に使ってしまうのだろうか。そのお金は私達が頂いたお金であって、中川社長から頼まれて運用していた訳では無いというのに。
そして松岡はその事務所をすっかり柳井氏に引き渡し、以前いた飯島愛がいた事務所に戻り、しかし結局数カ月ですぐにオフィスLを辞め、また私と共に事務所を作ったのだ。