#6 黒魔術?国魔術?Part2イニシエーション【 儀式 】

#6 黒魔術?国魔術?Part2イニシエーション【 儀式 】

私は、『 ところでその【こく魔術?】って何ですか?こく魔術のこくって黒い魔術って書く【黒(くろ)魔術】の事ですよね?』
と聞くと、中山さんは、
『 全く違いますよ。それは【くろ】って読む黒魔術の方でしょう。僕が言ってるのは【こく魔術】の方なんですよ。もちろん黒って書く黒【黒(くろ)魔術】の事では断じて無いですよ。』
と言うので、私は
『えっ、黒って書く【黒(くろ)魔術】とはただ単に読み方が違うだけじゃないんですか?』
とまた中山さんに尋ねると、中山さんは、
『 あのね、何度も言いますけどね、僕が言ってるのは【黒(くろ)魔術】では無くて【こく魔術】っていうんですよ。いくら何でも【こく魔術?】を【黒(くろ)魔術】と一緒にするだなんて、それは絶対にダメですよ。【黒(くろ)魔術】と【こく魔術】は、全く何の関係も無いものですから。それは絶対に違いますからね。いいですか、それは根本的に全くの別物なんですから、そこだけは絶対に一緒にされては困りますよ。僕は何に対しても怒ったりする事は有りませんが、それだけはいくら僕でも本当に怒りますよ。』と、威圧的に感じる程厳しい顔で言ったのだ。
私は、まさかこんな冗談かと思う様な話で、中山さんがこれ程までに真剣な顔で諭す様に話すので本当に驚いてしまった。
そこで私は、
『 すみません。てっきり【こく魔術?】のこくという字を黒【くろ】かと思ってしまって。分かりました。【こく魔術 ?】と【黒(くろ)魔術】は全くの別物で、中山さんが行っていたのは【こく魔術?】の方であり、【黒(くろ)魔術】とは、全く関係が無いという事ですよね。とにかく中山さんが参加していたのは、【こく魔術】というものなんですね?』と聞き直したのだ。
すると中山さんは、
『 勿論そうです。ここを間違えてしまいますとね、変な表現ですが、【味噌もクソも一緒】なんて事になってしまいますからね。ここを誤られて、優良・劣悪を判別せずに性質や価値の全く違うものを同列に扱われる事だけは【こく魔術】をやっている者としては断じて許されない事なんですよ。要するに味噌の専門店に行って、そこの店の味噌を指して【これはクソだ。】と言っているのと全く同じく失礼な事だという事なんですよ。』
と言ったのである。

私は、中山さんが意外にも、本気でムッとして気分を害していたのと、【こく魔術】なるものに、こちらが驚かされる程のプライドを持っている事に圧倒された。
私にとっては【こく】魔術だろうが【黒(くろ)魔術】だろうが、全くどちらでも良い事であったし、第一何故その様な些細な事に異常にこだわるのかも皆目見当がつかなかった。こんなところで中山さんは普通とは思えない何か尋常では無い、異様なこだわりの片鱗を見せたのだ。だが、悪魔を召喚する儀式といったら【黒(くろ)魔術】というものなのではないか、と普通なら皆、そう考えてしまうのではないだろうか。でも、中山さんがこれ程までに拘る以上、余程の並々ならぬ思いがあるに違いない。という事は、恐らく【こく魔術】なるものと、【黒(くろ)魔術】とでは、本当に全く違うものなのだろう。それにしても、【黒】の他に【こく】に当て嵌まる字って、どう考えてみても【国 】しか浮かば無いけど。しかもニューヨークなら英語だし、【ブラック】じゃないとすれば【こく】っていったい何の事だろう? と考察するとやはり、【国】(くに)の魔術って事なのかも知れない。それしか考えられないでは無いか。きっとそうだ、間違い無い。おそらくは特別な【国の秘密の魔術】なのだろう。もしかすると、本当の大金持ちのセレブのごく一部だけに伝えられるそうした特別な秘密の魔術が有るのかも知れないな、っと思ったのだ。

中山さんは、
『 とにかくそういう事です。これは非常に大事な事ですけど【こく魔術】の真の価値を知らず、【黒(くろ)魔術】等という全くの別物を決して一緒くたにしたり、ごちゃ混ぜにして間違えてはいけないのです。
それから【黒(くろ)魔術】等というものには決して近づいてはいけませんよ。
それらは私が言う【こく魔術】とは全くの別物であり無関係なものですからね。
とにかくこうした事をきちんと理解して頂ければいいんですよ。』
とにっこりと微笑んで、更に話を続けた。

そして中山さんに、
『 ところで五芒星とか六芒星とかって知ってますか?』と聞かれ、私は
『いいえ、知りませんけど。何ですかそれ?』と、中山さんに尋ねると、
『5つの角を持つ星マークで、そのうち互いに交差する長さの等しい5本の線分で構成され、中心に五角形が現れる星型五角形が五芒星です。ペンタグラム、いわゆる簡単に一筆書きが出来る星型の方です。六芒星は ...』などと説明されていた時に、私は
【あっ、それ知ってる!】と、ふと思い出した事があったのだ。
それは私が小さい頃からずっと長い間、不思議に思っていた【奇妙な型の星】であった。中山さんの【六芒星】の説明を聞いたところで初めてその【奇妙な型の星】の正体が【六芒星】の事だと分かったのである。

その私がずっと不思議に思っていた【奇妙な型の星】とは何かというと、私は小学生の頃から、学校の教室の私の机の上や、私の一つ前の席の背に、何故かよくその【奇妙な型の星】が描かれていたり、小刀か何かで掘られていたりしていたのである。私は【 変わった星の形だな!これって一筆書きで書けるのかな?やっぱり無理かな。】などとその溝をなぞっているうちにいつの間にかその【奇妙な型の星】を描く事がついつい癖になってしまっていたのだ。【五芒星】は簡単に一筆書きが出来るのだが、この私の机に彫られて描かれている【 奇妙な型の星 】のマーク【六芒星】は【五芒星】とは違い、一筆書きではなかなか上手く描けるものでは無く、星型多角形の一種だが、正三角形の重なり部分は【六角形】であり、6本の線分が交差する図形なのである。簡単に言えば、ただ単に2つの正三角形を逆に重ねた形だ。私は【 誰か星やハートの形が好きな女の子が描いたり彫ったりしたのかな?】と単純に考えたのだが、勿論それは、明らかに星の形ではあるのだが、何か奇妙なシンボルの様にも見える事や、進級したりそれどころか進学しても尚、またその【 奇妙な型の星 】が私の机にだけ彫られて、その線上を黒いマジックペンなどで頑丈に描かれているのだ。
それで何か、この【奇妙な型の星】は、何故か、ずっと私の後を追ってきてるかの様な気がしたのだ。
何故なら星やハートが好きな女の子は確かに多い。だが、その【奇妙な型の星】は、わざわざ小刀で机の表面を彫ったり、そこに更に黒いマジックペンでなぞられているなど、女の子らしからぬ荒々しいゴツゴツとした武骨な感じがしたのだ。また星といっても妙な形であるし、いくら何でも偶然にしては何かおかしいし不気味だなあ、と不可思議に感じていたのだ。
そもそも、いくら学校の机や椅子とはいえ、公共物にこの様ないたずらをしてはいけないのではないか、とも思った。
とはいえ、やはり自分の机にそんな星型に彫られ描かれた溝があると、退屈極まりない授業中は、手持ち無沙汰でついつい、その溝の中をなぞってしまうものなのだ。そうしていつもなぞっているうちに、その【奇妙な型の星】を描く事が長年の私の癖として定着してしまい、無意識の内に無性にその【奇妙な型の星】が描きまくりたくなる衝動に駆られ、しょっちゅう、ふと気付くといつの間にかその奇妙な星を机の上やノート一面にぎっしりと描いてしまっていたのだ。私のこの、【奇妙な型の星】を無性に描きまくりたくなる衝動というのは、恐らく誰にも分かって貰えないかも知れない。よく電話しながら目の前にあるメモ帳に、手持ち無沙汰で落書きをしている人がいるが、そうした人ならば何となく感覚が分かって貰えるのかも知れないが。だが、それがただの星の形では無く、【六芒星 】という特殊なものであった事が、あまりの偶然の一致過ぎて、驚きと同時にかなり気味が悪くゾッとした。だがもしそれが【六芒星】と呼ばれる特殊なものである事を知らない時に、『私が進級や進学をしても、まだ尚、何故かいつも私の机に、誰かが星を絵描いたり、彫られたりされるんだけど、何か変じゃない?』と尋ねてみたところで、例え私の周囲の学校の友人や大人達にでさえ、皆ただ単に『星やハートの絵はみんな好きだし、いたずらで描く子はよくいるよ。』などと言われるだけで、全く相手にもされなかっただろうし、私も不思議に思いながらも【そんなものかな。】と、自分自身でも納得してしまっていたであろう。第一、一般的には【五芒星】や【六芒星】の意味など誰も全く知らないであろうし、単にデザインの好みとしか思わないであろう。しかしそれが【ある特殊な意味を持つもの】である事を知り、私は『やっぱりあれは何かおかしかったんだな。 ひょっとして私は、長い間、誰かから呪いをかけられているのではないか!』とさえ思えてきたのだ。

六芒星】は、この日本でも古くから存在し、この【籠目紋】(かごめもん)と呼ばれる紋様は、六芒星の形そのもので、伊勢神宮をはじめ数々の神社などで古くから使用されている。
また【六芒星】はが【ヘキサグラム】と呼ばれ、ユダヤ人の国である【イスラエルの国旗】にも【ダビデの星】として描かれているのだ。

そういえば、私は小学生の時に家庭教師から誕生日プレゼントに【アンネの日記】という本を贈られた事を思い出した。
私の家庭教師は明治大学の付属の中学校などで講師をしていた方で、フランスにも長期留学し、英語やフランス語は勿論の事、スペイン語ラテン語エスペラント語やらその他合わせて7,8カ国語くらいを完璧にマスターしており、語学が三度の食事よりも大好きだという、非常に優秀な女性だったのだ。何故そんなに沢山の言語をマスターしたのかをその家庭教師に尋ねると、まず英語は世界中で最も通用する世界共通語なのでこれは確実にマスターしなければならないと思い、次にフランス語は世界1美しい言語だと言われているからフランス語に憧れたのだという。そしてスペイン語は、スペインの植民地が多かったので、スペイン語公用語にしている国が世界で20カ国以上ある為、またエスペラント語は世界共通語になると言われていたのでこれまたマスターしておくべき必須言語だと考えたという。

ラテン語は、元々、古代ローマ帝国公用語であり、フランス語・イタリア語・スペイン語ポルトガル語ルーマニア語など、これらは全てラテン語から派生した言語であり、単語や作りが似ている為、その元となったラテン語の文法をマスターする事により、複数のヨーロッパ言語を全くのゼロから同時に勉強するよりも効率的に学ぶ事が出来るので、絶対に学んでおくべき言語なのだそうだ。
そしてより多くの多言語をマスターする志を持つ者としては、比較言語学的に、共通の起源を有する言語を比較研究し、親縁関係や同系性が推定される諸言語を比較することにより、同系性や親縁性を見出したり、それらの共通祖語を再構築し、効率的に言語を学ぶ必要があるのだという。

そして現在でもローマ・カトリック教会ではラテン語公用語にしており、バチカン市国公用語なのである。

更に生物の学名や元素などは全てラテン語を使用する規則になっている為、学術用語や文献を読み解くにはどうしてもラテン語が必要なのだという。その家庭教師は、『因みに、私は英語とフランス語はもう飽きてしまったからでしょうけど、学んでて一番楽しいと思えたのは断然ラテン語ですね。ラテン語はローマ字読みでそのまま読めますから、意外と発音が簡単なんですよ。それはもう、ビックリするくらいに。複数のヨーロッパの言語がラテン語から派生しているので、ラテン語を学んでおくと他のヨーロッパの言語が体系的に学べて早く楽に覚えられるという理由だけで無く、ラテン語はとにかく楽しい、という理由で私は一番好きですし、本当に一番楽しく学べる言語なんじゃないかしら。フランス語は、フランスは私の第2の故郷ですから勿論、一番愛してますけどね。』と言っていた。

等といった理由により、どの言語も必要性に駆られてマスターしたに過ぎないのだそうだ。

またその家庭教師は、【アンネの日記】が大好きなのだという。それで私がその家庭教師から誕生日プレゼントに贈られた【アンネの日記】を読んだら早速その感想を聞かせて欲しい、と言われたのだ。そして次回の授業を休止し、代わりに是非私と一緒に、【アンネの日記】についてディスカッションしたいと提案されたので、私ももちろん、授業を休止にしてもらい、贈られた本についてのディスカッションをする事には大賛成なので、私は本来はこうした悲劇のノンフィクションの本を読む事は非常に苦手なのだが、そういった不純な理由から【アンネの日記】をじっくり読む事になったのだ。その家庭教師曰く、【アンネの日記】は、誰もが生涯に一度は読むべき本であるが、ナチス政権下のユダヤ人への迫害と恐怖の中で、この13才の少女が、隠れ家でいったいどの様な気持ちで日々を過ごしたのかを、私が大人になってからでは無く、感受性が強く多感な【アンネの日記】の作者アンネ・フランクとちょうど同じ年頃の時期に【アンネの日記】を読んで、ユダヤ人の少女アンネ・フランクのその時に置かれていた状況や気持ちを、どうしても私の心に深く感じ取って欲しかったのだという。

そしてその本の中にナチス政権下のドイツで、主人公のアンネ・フランクが、ユダヤ人だという理由だけで、この【六芒星】の【ダビデの星の紋章 】を、外出時に常に身に付ける様に義務付けされていたという話が書かれていた事を思い出したのだ。その家庭教師は【アンネの日記】当時のナチス政権下でのユダヤ人の生活に非常に興味があるらしく大変詳しかったので、その頃のユダヤ人の厳しい生活を聞かされたり、同じ年頃の女の子がこうした生活を強いられる事がアンネ・フランク同様、もしある日突然、私自身の身に起きたらいったい私はその時にどう思うのか。また【アンネの日記】に掲載されているアンネ・フランクやその家族の写真を見ながら、『ユダヤ人の顔の特徴はどこだと思いますか。』などと私に色々と質問をして、一旦私に考えさせてから、目や髪の色や目の大きさが違うだとか、ユダヤ人は他の白人系よりも、もっと鼻の付け根から高くて太いので鼻が長く見える。とか、かぎ鼻やわし鼻が多いなどの特徴を丁寧に教えてくれたのだ。その為、私は今でもアンネ・フランクの顔写真を見ただけで直ぐに涙が浮かんで来る程悲しい気持ちになるのだ。

この様な事などから、中山さんの話が余りにも真剣味を帯びているというだけで無く、【五芒星】、【六芒星】などというものが何か自分に関係しているかも知れないなどと思い始めた理由もあり、急に非常に興味深くなり、私は早くその続きが聞きたかったのだ。

中山さんが、その集会【 ミサ 】でフロアに描かれた円陣の中に【五芒星】が描かれた中心で奇妙な儀式をして以来、中山さんに取り憑いた【 悪魔の皇太子 】と名乗る者が、普通に人が喋っているのを聞くかの様に、中山さんに24時間ずっと英語で話しかけてくるのだというのだ。
中山さんは、もしかすると変な悪霊に取り憑かれたか、もしくはそれが悪魔に話しかけられているという妄想なのではないかと心配になり悩んでいたところ、その【 悪魔の皇太子 】に、ニューヨークで一番大きな図書館に行ってその【 悪魔の皇太子○○ 】の名前を調べてみる様に言われ、言われた通り図書館に行ってみると、【 悪魔の人名辞典 】が有ったので、その悪魔に聞いた名前を調べてみると、悪魔には沢山の階級や序列が有り、中山さんに取り憑いた【 悪魔の皇太子○○ 】は、何と本当に【 悪魔の皇太子 】として名前が辞典に乗っており、最も偉い悪魔の次に偉い、悪魔の中でも大物中の大物だったのだという。その辞典を見て【 悪魔の皇太子 】から聞いた名前を実際に確認し、ようやく中山さんは、頭がおかしくなったのでは無く、本物の【 悪魔の皇太子 】が自分に憑いたのだと自覚し、しかもそんなに偉い悪魔だったのかと、非常に驚いたのだという。
そうしてそれから悪魔の皇太子との奇妙な共同生活が始まったのだという。その話をしている間中山さんは、何故か度々私に『 悪魔の皇太子の○○って名前に聞き覚えが有りませんか。』と、さも私がその名前を聞いた事が有るのが当然かのごとく、私に尋ねるのだ。
正直中山さんが、一体何故この様に私が【 悪魔の皇太子○○ 】の名前を知っていて当然だと思い込んでいるのか、不思議に思った。しかも私は、『 いいえ、全く知りませんでしたけど。』と、その度に言っているのにも拘わらずである。すると中山さんは、 『 それはおかしいなあ?いくら何でも悪魔の皇太子○○の名前くらいは、絶対に聞いた事くらい有るはずですよ?』などと言って、本当に不思議そうに何度も首を傾げるのだ。
逆に私は、【 えっ?何を言ってるんだろう?本気で言ってるのかしら?一体何故私が悪魔の皇太子の名前を知っているのがまるで当たり前の様に何度も確認するかの様に聞いてくるのかしら?本当に変わった人だなあ。】と、奇妙に思ったのだ。だいたい私はそれまで悪魔の存在すら全く信じていなかった上に、悪魔の種類が沢山有り、その中でも序列だの低級だの高級だか偉いとか階級が上の方が力が有るだとか、私が知っている訳が無い。それが普通では無いのか?中山さんは、一体何故、悪魔の皇太子の名前なんてものを当たり前の様に私が知っているはずだと思い込んでいるのだろうか? だがもしかすると、【 悪魔の皇太子○○ 】というのは私が知らないだけで、実はかなり有名で知らない人の方が珍しいのかも知れないのだが。

私はまた中山さんに質問した。『 ところで悪魔というと、映画などでは、首が360度回転したり、壁や天井に貼り付いたりしているイメージが有るんですけど、中山さんが言ってる悪魔の皇太子はそれとは違うんですか?』と聞くと、中山さんは、『 あのねえ、それは本当に低級な者に決まっているでしょう。悪魔だって神なんですよ。人間なんかとは比較にならない神のごとく頭が良いのに、首をグルグル回転させたり、壁や天井に貼り付いたりして一体どうするんですか?それじゃただの馬鹿じゃないですか。まあ映画はただの作り話ですけどね。人間だって程度の低い者もいるでしょう。それと同じですよ。悪魔には非常に細かく序列や階級が有るんですよ。』

悪魔の序列については、悪魔に名前をキチンと尋ねて図書館にある悪魔の人名辞典で調べれば、全ての悪魔の名前が載っているので、一発で階級が判明するので、いとも簡単にどんな悪魔なのか特徴も何も全て分かるのだという。
だからもし階級が低い悪魔ならば決して相手にしてはいけないのだそうである。
そして悪魔は、階級こそが一番重要であり、階級が上のクラスの悪魔を憑ける事こそが非常に重要な事なのだという。
その中でも【 悪魔の皇太子】は、とりわけ別格中の別格で、強大な力が有り、非常に賢く品もいいのだという。そのクラスなら絶対に安全なのでもし憑けるならそれくらいのクラスを憑けなければならないのだというのだ。
それにしても一体何故1番偉い悪魔の次である2番目に偉い悪魔である【 悪魔の皇太子○○ 】が中山さんに憑いたのか、その中山さんに憑いた【 悪魔の皇太子 】が余りにも大物なので、【 こく魔術 】の集会の仲間達皆から本当に驚かれたのだという。
『 これが、ちょっと考えられないくらい、普通じゃ有り得ない、とてつもなく凄い事らしくてね。』と、中山さんはよほど嬉しい事らしく、やけに誇らしげな笑顔で笑っていたのが印象的であった。

だがその【 悪魔の皇太子 】は、意外にも気さくな人柄で、いつもジョークを言って笑わせてくれてる大変に陽気で面白い人物なのだという。
私が、『 ちなみに【 悪魔の皇太子 】とは、何語で話してるんですか?日本語?英語?それともテレパシー? 』と、中山さんに尋ねると、『 勿論全部英語ですよ。僕も何度か日本語で話しかけた事が有るけど、その度に完全に無視されたましたから、日本語が分からないのか日本語を馬鹿にして相手にされなかったのかは分かりませんけどね。当たり前ですけど全部英語ですから、英語が分からないと話が全く通じませんからね。言っておきますけど。』
とにかく、中山さんは【 悪魔の皇太子 】とは非常に気が合ったし、毎日が面白可笑しくてもの凄く楽しかったのだという。だが、中山さんはいくら【 悪魔の皇太子 】が力があっても、何も願い事などをしたりはせず、普通に親友みたいになっていたのだという。それは何故かというと、中山さんは元々大金持ちであるし、将来は病院のあとを継ぐ事に決まっているので、願い事が何も無かったからだというのだ。