Epilogue Part10Silent night, Holy night2

Epilogue Part10Silent night, Holy night2

私は【静かな夜】というと、いつも思い出す事がある。
それは、私が初めてローマン・カトリック教会のバチカン市国ローマ教皇庁】の国家機関である【神秘課】という、世界中から寄せられる【奇跡の申告】を検証し調査するセクションに属する奇跡調査官である、元華族の家系であり、その父が旭日賞の勲一等、また彼女自身が旭日賞の勲六等天皇陛下から直接授与された女性であるN氏に会う前日に見た夢なのであるが、それは今もやけに鮮明でリアルに思い浮かぶのである。

その夢というのが、真夜中に、しんしんと雪が降り積もる中、'私が黒いコートを着て両手をポケットに入れ、たった1人でしばらく佇んでいたのだ。
そこは、建物も音も全く何も無い静まり返った場所で、漆黒の闇の中、雪で辺り一面を覆われ、美しい銀白色の世界となっており、その雪あかりで周囲は、ほの明るかったのだ。

そして、ふと私から見て左の方を見ると、その頭上の真ん中に、キラキラと光輝くダイヤモンドで出来た沢山の角が幾重にも折り重なっているのか、もしくは頭上にダイヤモンドの冠を乗せた1匹の真っ白な子羊の様なものが、ちょうど私から見て左側の方から、頭上くらいの高さでこちらに向かって飛んできたのだ。
私は、その子羊の、頭上のダイヤモンドで出来た沢山の角が幾重にも折り重なっているか、ダイヤモンドで出来た冠かが、あまりにも光り輝き煌めいていたので圧倒されたのだ。

だがその子羊は、私の目の前をほんの一瞬で通り過ぎ、私から見て右側の方角に、あっという間に飛んで駆け抜けて行ってしまったのだ。
そして私が子羊が向かった右側の先に目を向けると、そちらに真っ白な途方も無く高い壁か塀がそびえ立っているのが見えたのだ。

私は咄嗟に
「危ない。子羊が壁に激突する。」
と、思った矢先、子羊はその途方も無く高い真っ白な壁の中腹に飛び付いたのだ。
すると、その壁の子羊が飛び付いた部分から、子羊のふわふわモコモコとした真っ白なぬいぐるみの様な可愛らしい尾っぽ(後部)だけが見えたのだ。
と、子羊は、するすると吸い込まれる様にその真っ白な壁の中を通り抜けて中に入ってしまい、そのまま見えなくなってしまったのだ。
そして私は、子羊を吸い込んでしまったその途方も無く高くそびえ立つ真っ白な壁か塀を、呆気にとられ眺めていたのだ。

だが、それを見て私は、その途方も無く高くそびえ立ち、絶対に通り抜け不可能だと思われた真っ白な塀か壁が、実はまるで、雲か綿菓子の様なフワフワとした素材で出来ているのだろうかと思い、とても不思議でファンタジックな気分に包まれた、という夢である。

これは、真夜中に、何も無い、ただ降り積もる雪で一面を覆われた美しい銀白色の世界の中で、物音一つ無く、しんと静まり返った静寂に包まれた、現代の現実世界では経験する事の無い、この上なく、誠に【静かな、静かな夜】だったのである。