#Epilogue Part3公安調査庁CIAAgentMr.K 

#Epilogue Part3公安調査庁CIAAgentMr.K  

これは#1R.I.P.CIA Special Agent Mr.K  #Part2の続きである。

 


私はかなり長い間この、国が総力を挙げて国家権力を行使した包囲網を、完全に芸能界絡みの事だと思っていたのだが、それにしてもなぜこんなにも大掛かりに国家から包囲網を敷かれ嫌がらせをされ続けているのか、その本当の理由が分からず、ずっと苦しんでいたのだが、ある人物から初めて私にこの国家規模の包囲網を敷かれている本当の理由の一部を教えられ、誰もが恐らく信じられないであろう、狂ってるとしか思えない国家総動員空前絶後の大規模な私への包囲網の状況が少しだけ分かったのだ。

私にその私を取り巻く包囲網についての状況を教えてくれたある人物というのが、元公安調査庁のエージェントで、その後CIAのエージェントになったK氏なのだ。

 

 

私は【Part1】でも述べた様に、ちょうどこの件をK氏に全て任せる直前迄、大物で力のあると言われる人物【 静岡にあった山口組山口組後藤組という芸能界でも凄い力を持っている組の企業舎弟であり、新党大地の代表で元衆議院議員鈴木宗男氏と一緒に中川一郎という自殺した大臣の元秘書の渡辺あきら氏が、その後藤会長に頼んでくれていて解決に協力しようとしてくれていた】や、他にも私の女友達のご主人である【椎名林檎】の曲を作曲しているエイベックスの作曲家兼アーチストの男性から、Vシネマで有名な【 ミナミの帝王 】の萬田銀次郎のモデルであり現在は都内に在住している金融会社社長にも、具体的に私達の相談に乗ってもらう為に会わせて貰う手筈になっていた【 詳細は後程】のだが、そのK氏から私に『 もしそうした人達との関わりを全て完全に断ち、この件を全て僕に任せるならば、元公安調査庁の職員である僕が、この問題を個人的に全面的に解決に協力してもいい。』と言われたのだ。【CIAのエージェントだと打ち明けられたのはその後】そして、『この件に関しては僕だけに任せ、他の誰にも決して相談してはならないし、例えどんなに力のある人物でもこの話に交えてはならないよ。』と厳しく言われていたのだ。
更にK氏は『 ヤクザとは決して関わってはいけませんよ。いくら取れた金額の折半にしてくれるって言っても半分は持っていかれてしまうんだし、本当に取れた分の半分をくれるのかも信用も出来ないし、そりゃ一部はくれるんだろうけどね。第一、公安調査庁とヤクザのいったいどちらが強いと思ってるの?はっきり言って比べ物になんかならないよ。公安調査庁からみれば、ヤクザを潰す事なんてあまりにも簡単過ぎて赤子の手をひねる様なもんだよ。それにヤクザはどこにでもいるけど、僕の様な公安調査庁の人間にはそうそう会えないよ。あと言っておくけど、ヤクザではこの問題は根本的な解決には絶対に至らないよ。君のその問題をその程度のつまらない話で終わらせてもいいのならヤクザにでも頼んでみればいいじゃない。』と、私に言ったのだ。私はその頃は山口組後藤組の会長がどれ程の力があり有名であったかなどまるっきり知らなかったので、【 その程度のつまらない話で終わらせてもいいのならって!?それは一体どういう事なんだろう。】と思った。何かK氏の話を聞いているとどんな力がある有名なヤクザの組長やあの有名なミナミの帝王よりも公安調査庁の方が全然力が有りそうだ。
だいいち元々は私が自称【国土交通省】の官僚を名乗る田辺に相談し、【私を公安の人間に紹介し全面解決させる。】と約束されていた為、私はそれを信用していたのだが、突然田辺と連絡が着かなくり困っていたところだったのだ。
それがこんなに都合良く私に協力してくれるという【公安】の人間に出会えたなんて、まさに【渡りに船】ではないか。
まして親身になって力になってくれる元公安調査庁の職員なんて、間違い無くなかなか会えないだろう。根本的な問題解決が出来るならそれが一番大事な事であり、だいいち【 その程度のつまらない話で終わらせていいのなら 】なんて言われてしまうと、一瞬金に目が眩みつまらない物を掴まされるところだった様な、何だか危うく酷く損をするところだった様に思えたのだ。


K氏はまた、『 あとこれだけは言っておくけど、この件では絶対に公安調査庁は関わってないからね。だから君が包囲網を敷かれて嫌がらせをされているのを【公安調査庁のせいにだけは決してしない】、とそれだけはまず先に約束しておいてもらわないとね。それだけは絶対に違うし、それを公安調査庁のせいにされてしまったら、僕も君の問題解決には協力出来ないからね。僕は元公安調査庁の職員として、あくまでも個人的にこの問題に興味を持って君に協力するだけだから。それに、僕も君の話を聞いてて僕なりに思うところがあったから。』と言われたのだ。
この前の#7のPart1で詳しく述べたが、私が自称【国土交通省】の官僚を名乗る田辺に相談し、【私を公安の人間に紹介し全面解決させる。】と約束されていた為、私はそれを信用していたのだが、突然田辺と連絡が着かなくり困っていたところ、銀座のクラブで働く女友達から私を旅行に招待すると言われ、2人で東京駅から新幹線に乗った車内でいきなり、【実は友人がこの旅行に招待してくれたのであり、サプライズで大掛かりに私達の歓迎会の準備をして現地でハイヤーを用意して待っている。】と言われ、福島駅に着くと、岡山市長【萩原誠司】(はぎわら誠司)【その後、衆議院議員】の秘書や現地の大地主の有力者や、社長や専務などが何台ものハイヤーを用意して私達が到着するのを待っていたのだ。
そしてそこで静岡の山口組の後藤会長の企業舎弟である六本木で設計事務所を経営する渡辺社長と知り合い相談していた矢先、偶然そのT氏をいわゆる携帯電話のキャリアでは無い【Yahoo!】の普通のメールアドレス【捨てアド】のメールアドレスから探し出してくれるという元公安調査庁のK氏に出会ったのである。
だが私は自称【国土交通省】の官僚を名乗る田辺の事も、ついでにこの後藤会長の企業舎弟である六本木で設計事務所を経営する渡辺社長に探してもらおうとしていたのだが、ちょうどその矢先にこの元公安調査庁のK氏が偶然にも私の前に現れたのである。

 

だがよくよく思い返してみたところ、私は田辺から私に教えられていた【Yahoo!】のメールアドレスの他に、もう一つ【u-tokyo 】という別のアドレスも聞いていたのを思い出したのだ。そしてその【u-tokyo 】というドメインは何と、東京大学固有のドメインだったのだ。

 


結局自称国土交通省の官僚の田辺は、K氏によれば、私に詳しくは教えられないが田辺は表向きは東京大学内で働き、裏で公安関係の仕事をしているのだと言っていた。


K氏が田辺を見つけたものの、田辺が私の相談相手となる公安の人間を紹介するという約束だったので、私はその約束だけは絶対に履行させたかったのだ

 

だが、K氏から『あなたの相談に乗る公安ならもうここに僕がいるじゃありませんか。』と言われ、私も【確かにもう既にK氏という元公安調査庁のエージェントに相談しているのだし、それもそうだな。】と思ったのだ。

本当によくよく考えてみれば、田辺を見つける為に協力してくれた人物自体が、全くの偶然にも元公安調査庁のK氏だった為、実際に最早、田辺から公安の人間を紹介して必要が無くなったのだ。

それに私の周囲の国家権力による包囲網を取り除き全面的に解決する為には、静岡の後藤組の後藤会長では確かにお金は取り戻せるかも知れないが、国家権力による包囲網を取り除くところまで辿り着かないかも知れないな、と思い、当初の予定であった【公安の人間に相談し根本的に解決する】という目的に軌道修正し、せっかく元国会議員の鈴木宗男氏と共に元中川大臣の秘書をしていた渡辺社長が、後藤会長に私の件の解決を依頼して貰っていたのを断り、私は元公安調査庁のK氏に全面的に任せる事にしたのだ。

 

 

そこで私は勿論色々なトラブルについてK氏に頼んでいたのだが、『全てのトラブルを一緒くたにせずに、まずはトラブルを一つずつ分けて順番に解決していく。』とK氏から言われたのだ。

それでK氏が、一つ一つ別個に私に聞き取り調査を始め、それらを【本格的には後から作成する】として、取り敢えずまずは、K氏が私から聞き取った話の断片を繋ぎ合わせて整理してまとめていき、K氏がそれをきちんとした正式な文書にしていくという作業をしていたのだ。こうして文書に掘り起こしていく作業を、所謂【掘り起こし作業】と云うらしい。

 


だがそうして話しているうちに一つ一つの事柄に対してK氏が『それは妙ですね。普通ならそんな事は有り得ませんが。』などと段々と言うようになってきたのだ。そこからK氏は突然、私が優先的に解決を依頼しているトラブルとは一見全く関係無いと思われる、私の母や祖母の質問ばかりをする様になり、【いったい何故母や祖母の事などばかりを聞きたがるのだろう、そんな話など全く時間の無駄でしか無い。】と私は苛立っていたのだが、次第に『これは確かに何かおかしい、いったいどういう事なのだろう。』と私が不可思議に思う程、K氏は不審に思える事柄を的確に突いていったのだ。

 


その切っ掛けとなった話が【第2部】の#2で述べた【皇太子妃雅子妃殿下の亡くなった元婚約者】の話であったのだ。だがその話自体何故か、K氏の方からまず先に、私に『何か皇室関係で秘密の話とか聞いた事はありますか?』と聞いてきたのだ。

それで私は『そういえば、三菱商事の青島という友人から香港によく招待をされて遊びに行っていた時に、雅子妃は皇太子から結婚を望まれていたのだが、雅子妃には元々同じ外務省に婚約者がいたので皇太子からの結婚の申込を断ったところ、その婚約者が突然、事故か何かで不審死を遂げたのだが、それをその外務省勤務の元婚約者の親友であり雅子妃とも親しかった友人である省庁に出向し大臣の答弁書も作成している三菱系銀行の者や三菱商事の青島の上司の井脇氏から、それは暗殺なのだと聞いておりましたが。』と話し、それを【#2】で述べた様に詳しく説明させられた事で大きくK氏との話の方向性が変わっていったのだ。これはK氏に相談していた時の転換期となった重要な点なので、【#2】でK氏が述べたそれについての意見を再び述べる事とする。

 

この香港で偶然に目の当たりにした、一連の、皇太子妃雅子妃の、雅子妃との結婚直前に変死【暗殺?】により亡くなられた元婚約者の話を、元公安調査庁の諜報員でありCIAのエージェントであったK氏に話したところ、K氏は、
『 結論から言うと、偶然でそんな話を聞く事は絶対に有り得ませんよ。そこまでの偶然はいくら何でも有る訳が無いでしょう。そんな外国の香港にわざわざ三菱商事の青島という人間から全て無料で何度も招待されて、たまたまあなたの友人の青島が居ない時に、三菱商事の青島の上司の井脇という者と省庁に出向してて大臣の答弁を書いていたという、皇太子妃の雅子妃の友人でもありその雅子妃の元婚約者の親友の三菱系の銀行の者から、
『雅子妃が皇太子からの求婚を頑なに断って同じ外務省の男性と婚約したら、雅子妃と婚約したその男性が結婚を直前にして急に変死しただの暗殺された。』
だの、またその時の雅子妃からの元婚約者への愛する思いが認められた手紙を持っていて、その三菱系の銀行勤務の雅子妃の元婚約者の大親友だけで無く、その友人である三菱商事の井脇までが、その雅子妃からの手紙を読んでいて、おまけにその話の証人になるだとか、そんな恐ろしい国家機密を、偶々無料で招待を受けた遠い異国の地で突然打ち明けられるだなんて。
更にそこにまた、これが決定的ですが、皇太子妃雅子妃の亡くなられた元婚約者の弟さんである三菱商事勤務の井脇氏の部下が、そんな話をしているところで偶然に、外国であるその香港の九龍の一流ホテルのレストランにちょうど同じ時間に予約をしていて入って来るだなんて、馬鹿馬鹿しい。
そんな外国でそこまで偶然が沢山重なる訳が有り得ませんよ。それはおそらくあなたを呼び出して皇室関係の事であなたが誰かに何か口止めされていたりだとか、何かを聞いていて知っている事が無いか、有ればそれを引き出そうとしていたんでしょうね。それでその事を確かめる為に、国内では口止めされていて話せないかも知れないと思い、外国という開放的な空間で壮大なセットを仕掛けたんでしょうね。そこでその三菱商事の井脇と三菱系銀行の者達があなたに、我々も皇室からの被害者なのだと見せかければ、あなたが同じ立場の者達だと思い込んで安心して【実は私も天皇家の事でこんな話を聞いている。】等とポロっと漏らすでしょうからね。
それにその雅子妃の元婚約者の親友だという三菱系の銀行の者とあなたは初めて会ったんでしょう?だいたい初めて会った学生の女の子に、突然そんな聞いてしまったら殺されるかも知れない様な国家機密をバラす訳が有り得ませんし、常識外れも甚だしいですよ。しかもちょうど正にその話をしている時にそんな遠い外国の香港のホテルのレストランで、偶然にも同じ時間に同じく三菱商事に勤務する、その雅子妃の元婚約者の弟さんが現れただなんて。それがまず間違い無く壮大なセットを仕込まれていたという根拠ですよ。だいたいその元婚約者の弟さんがこれまた同じ三菱商事の人間だったわけでしょう。全員三菱系の者達って事ですよね。あなたは、三菱系の銀行勤務のその雅子妃の亡くなった元婚約者の親友とその雅子妃からの手紙を読んだ三菱商事の井脇と、三菱商事に勤務するその亡くなった元婚約者の弟さんという、皇太子妃の元婚約者の暗殺事件の3人もの重要な証人に図らずも会ってしまった訳だし、そこの香港のレストランで、亡くなった雅子妃の元婚約者の弟さんが入って来てそのテーブルに挨拶をして来た時に、当事者が一同に、何故か日本から程遠い外国の香港の九龍の一流ホテルのレストランに集結してしまった訳ですよね。でもその瞬間に明らかにただのゴシップや噂話の域を超えてしまい、あなた自身もその重大な国家機密の生き証人になってしまった訳ですからね。
それから雅子妃と同じ外務省に勤務されていた、雅子妃との結婚を目前にして亡くなられた元婚約者の親友だという三菱系の銀行に勤務されてる男性が、雅子妃から直接送られて来た、雅子妃と同じ外務省に勤務されていた元婚約者をどれ程愛しされていたかだなんて事が延々認められた手紙を持っていて、それを赤の他人に見せたり話しているだなんて、まず有り得ませんね。だってそんなとんでもない国家機密に該当する重大な物品を持っていてそれを友達に見せたり、ましてやそんなこの国の暗部を親しい者達だけならまだしも、見ず知らずの初めて会った学生の女の子にまで皇太子妃の元婚約者の暗殺だなんて、そんな途轍もない重大な国家機密をバラしまくっている様な者に、この日本の皇太子妃である雅子妃と同じ外務省に勤務されていた亡くなられた雅子妃の元婚約者を雅子妃がどれ程愛していたかを認められた手紙だなんてそのまま持たせていたら、またどんどん関係の無い色々な一般人に言いふらすでしょうし、海外のマスコミ等にその雅子妃から送られたその手紙を売り払ったりするかも知れませんし、そうしたらとんでもない事になりますし、そんな事を国家が放っておく訳が有り得ませんよ。まず間違い無く、その雅子妃から送られた手紙は没収されているし、関係者には全て箝口令が敷かれていますね。

勿論、三菱商事の井脇やその三菱系の銀行の元婚約者の親友とやらからその話を聞いた人達全員にもね。それと三菱商事に勤務するその亡くなられた雅子妃の元婚約者の弟さんにも、【家族の者が暗殺された】だのと言い出さない様に、当然箝口令が敷かれてる筈ですよ。

それからその皇太子妃である雅子妃と同じ外務省に勤めていた、雅子妃の亡くなられた元婚約者の話は、実は私も知ってました。ですからその話自体は本当の話ですよ。

でもその話は勿論完全に箝口令が敷かれてますよ。公安調査庁の中の人間だって一部の者しか知りませんから。

いったいその話を知っている人がこの日本の人口1億人の中に何人いると思いますか?それくらいこの話を知っている人は極めて少ないという事なんですよ。
それなのにそんな事を言いふらしていたら、まず間違い無く皇室を転覆させようとしている反社会的人物として抹殺されていますよ。それにその雅子妃の外務省に勤務されていた亡くなられた元婚約者の親友という男性は三菱系の人間なわけだし、大臣の答弁の原稿を書いてる様な人物なわけでしょう。それならいくら何でもその程度の常識は分かるでしょう。
という訳で、明らかにわざわざ遠い外国の香港にまであなたを呼び寄せて、あなたに同じ皇室関係の被害者だと見せ掛けて味方の振りをして、皇室関係の話をどれだけあなたが知っているかを調べようとしたのと、皇室関係のあなたが知っている事を引き出す事が主な目的でしょうね、まず間違い無く。まあ国家とはそうした暗殺等もいとも平気で行うという事をあなたに教えたかったという事もあるんでしょうねえ。固く口止めされている人から話を引き出す為だったら、それくらいの大掛かりなセッティングをして味方の振りや同じ被害者の振りをしないと無理ですし、日本から遠く離れた外国なら話しても大丈夫かと開放的な気持ちにもなるでしょうから、それくらいの大掛かりな仕込は当たり前にやりますよ。』と言ったのだった。


その後、その話を切っ掛けに話が急展開し、K氏からの私への質問内容が【私の母の名前の事などで、何かおかしな点は無いか?】とか【宮内庁の人と結婚した身内はいないか?】また【祖母の妹さんはいないか?その妹は美人か】など母や祖母の話が中心になり、私は最初母や祖母の質問をされた時に、【母や祖母の話など全く関係無いのに面倒だなあ。そんな話どうでもいいのに。】などと思っていたのだ。

だがその中で、K氏から『おばあさんの妹さんと宮内庁が何か関係していませんか?』と質問をされたのだが、それは正に私が【えっ?いったい何故それを知っているのか?】と驚愕し問い質したくなる質問だったのだ。

それで私は、【これは何かあるな。】と思い、そこから私はK氏に、以前母から聞いていた私が知る限りの話を思い出して話し始めたのだ。


私が幼い頃、祖母の妹の【あい】が祖父や祖母や母と一緒に住んでいたのだが、いつも家事等をしていて【あい】はまるで【家政婦さん】の様な存在であった。

だが【あい】は家族の者に対して誰一人に話しかけたりする事が無かったのだ。勿論、私も一度も話しかけられた事が無かった。小さい頃、私が【あい】に近づくと、母が【あい】に『ほら、あいちゃん、話しかけられてるから返事をしてあげて。』などと言うと小さな声で『あい。』などと返事をするだけだ。私は幼いながら【あい】が年で耳が遠いか呆けているのか、そのどちらかであろうと思っていた。その後【あい】は認知症が更に酷くなり、いつの間にか老人ホームに入っていてそこで亡くなったのだ。

 


そしてその祖母の妹である【あい】は嘗ては、普通にはまずいない様な、もの凄い美人だと評判になっていたのだという。それでその【あい】の美人との評判を聞きつけてお金持ちの靴屋を営む男性と結婚をしたらしいのだが、すぐに離婚して実家に戻って来てしまったのだそうだ。

 


だが実家に戻ると直ぐにまた、【あい】が大変な美人との噂を聞きつけた宮内庁の立派な男性が家にやって来て『【あい】さんを嫁にしたい。』と言ってきたのだそうだ。それで【あい】の親(私の曽祖父母)は直ぐに嫁に出してしまったのだと云うのだ。

そして祖母の妹である【あい】は、宮内庁の男性と結婚をして、何と【皇居の中】に住んでいたのだという。因みに母が祖母に【あい】の結婚相手であるご主人が皇居の中でどんな仕事をしていたのかを聞いたところ、祖母から【馬に乗っている人】などとよく分からない事を言われ【何それ?】と思っていたのだそうだ。だが祖母もその妹の【あい】も私が子供の頃に亡くなっているのでそれ以上の事は分からないのだ。それでその話からK氏は、『 馬に乗っている人って変な話ですねえ。まあでも普通に考えれば皇宮警察の人とかですかね、皇居の中に住んでいるという話からしても。とにかく【あい】さんのご主人が誰だったのか素性を調べなければ。では母方のご家族の附票とお母さんの戸籍謄本と住民票を急いで取ってきて下さい。それからお母さんの卒業証書なども。』と言われたのだ。それは、もう一つ母について不可思議としか言いようのない事象があり、それをK氏に話たところ、K氏から【この日本で日本国籍の人でそんな事がある訳が無いし絶対に不可能だ。】と言われた事象が発覚し、他のトラブルの解決はを一旦中断してまでも、真っ先に母や祖母や【あい】などの戸籍謄本や住民票を調べなければならなくなったのである。

だが私も何点か【これは明らかに何かおかしい。】と思うところがあったのだ。細かい事まで挙げればキリが無い程沢山ある。

 


例えば、信じられない様な話だと思われるかも知れないが、その一つが、私が学校に遅刻するのにまだ家で一人で部屋で寝ていた時に実際によくあったのだが、ちょうど一般に会社が始まるくらいの時間に、私の家には大きな給食センターらしきと間違えられた電話がひっきりなしに家の固定電話に掛かってきていたのだ。

 


私は学校の授業に遅刻するにも拘わらずよく寝坊していたのだが、すると朝の9時過ぎから家の電話に『○○弁当を50個とあとは ...』などというまるでコントの笑い話の様な電話がひっきりなしに掛かって来ていたのだ。

最初、私は『ここは給食センターでは有りませんよ。違う所に掛かってますよ。』などと真面目に答えていたのだが、何度も掛かって来るので面倒になり、また誰かのいたずらだと思ったので眠いながらも、『○○弁当50個ですね。全部で100個ですか?了解しました。』などと冗談で言っていたのだが、睡眠を邪魔された挙げ句あまりにもひっきりなしに電話が掛かってきた為、私は【ただのいたずらで友人がやっているなら、すぐに名を名乗るだろうしいたずらだと明かすだろう、だが余りにも大勢の人を使って電話してるし、いくら何でも悪ふざけが過ぎる。】と思い非常に腹が立った。

それで『いたずら電話もいい加減にしてよ。私はまだ寝てたのに、朝早くからふざけないでよ。いったい誰がこんないたずらしてるの?』と怒鳴ったのだ。

すると受話器の向こうから『いたずらなんかじゃ有りませんよ。こちらは真面目に従業員のお昼の弁当を注文してるんですよ。うちの工場には従業員が何百人と大勢いるんですから、お昼休み迄に弁当が届かないと本当に困るんですよ。』などと、さももっともらしい事を言ってくるのだ。私は、【何て本当らしい嘘をつくのだろう。いくら何でも悪質では無いか。】と呆れていると、丁度会社の人達が一斉に弁当を注文する時間になったらしく、その後いっぺんにとてつもない量の電話が掛かってきたのだ。実家では、キャッチホンどころか【トリオホン】というサービスも利用していたので少し経つと話している電話の中にキャッチホンのベルが鳴り、私がガチャっと電話を切っても切ったところからまた弁当の注文の電話が入り、そこでまた電話を切ると更に次から次へといっぺんにいくつもの複数の電話回線で混線しながら話す様にまでなってしまったのだ。

これには私も少しパニックになり、私は『もう本当にいい加減にしなさいよ。何が弁当100個よ。こんないたずらするなんてあなた達、頭がおかしいんじゃない。』などと怒り狂ったのだ。

だがいくら怒鳴りまくってもまだしつこく全く懲りずに家に電話を掛けて来て『弁当を100個、○○工場まで持って来て。』などと言っているのだ。

そして電話を掛けて来る方も冗談とは思えない程、大真面目な話しぶりなのだ。

その上その声も、何故か年配の人の声だったりするので、これにはさすがに私も、【何かおかしいな。もし友人がいたずらをしているとするなら、こんな年配の人達まで借り出す事などさすがに有り得ないだろう。それにこの人達は本当に弁当を注文したくて必死としか思えない。】と不思議に思い、トリオホンで色んな人達といっぺんに電話が繋がっている時に『皆さん、電話番号は何番にお掛けですか?これはいたずらでは無く本当にお弁当を注文したいのですか?』と聞いたのだ。
すると皆、『とんでもない、いたずらなんかじゃ有りませんよ。会社で皆から頼まれたお昼の弁当を大量に注文しなければならないのに、こんな怒られていったいどうなってるんだろう、この給食センターの電話番号は、毎日電話を掛けている番号だし、電話機に登録している番号なので、その上全く似ていない電話番号なのにそんな何度も間違える訳が無いのに。それに電話番号も○○という給食センターにきちんと掛けていますよ。』などと言い出したのだ。更に別の人達も全く同じ様な事を言ったのだ。私はその電話番号を聞いて【確かに、その電話番号では私の家の電話番号とはどこも似通って無いし、間違えようも無い、全く関係無い電話番号では無いか。にも拘わらずこれ程何度も、しかも同じ時間に一遍に私の家に大量の間違い電話が掛かってくる事など有る筈が無い。それが一斉に私の家の電話に掛かって来るなんて、いったいどうなってるの?】と思った。

どうやら皆、冗談やいたずらでは無く、本当に会社でお昼の弁当をまとめて注文しようとしているのだ。

こうして私の家に間違い電話を掛けて来る者達から事情を聞いた結果、どういう訳なのか、電話が混線してその給食センターに電話を掛けると何故か私の家の電話に繋がってしまう事をようやく私は理解したのだ。

つまりはこの大量の弁当を発注してる工場の事務員の人達は、決して私の睡眠の邪魔をしていたずらしているのでは無く、偶然にも何故か私の家の電話とその大きな給食センターの電話回線が混線してしまったという事なのだ。

或いは誰かが故意にいたずらで家の電話回線と給食センターの電話回線を混線させ、混乱を引き起こして楽しんでいるのだろう。

だが、もし私が学校をサボって寝ているのを見計らってこんないたずらをしているのなら、私が寝ている所を起こしてこんな睡眠妨害をするだなんて何という嫌がらせをするのだろうか?

それに弁当を注文しなければならない事務職の人達も、何度も何度も繰り返し私の家の電話に掛けて来て、『あら、また掛けてしまってすみません。でもいくら電話番号を確かめて掛けても毎回そちらに電話が掛かってしまう様で。困りましたね。弁当をお昼休み前に注文が出来なかったらどうしましょう。』、などと私に謝りながらも、彼らが本気で困っている様子なので、私も段々と気の毒になってきた。彼らもまた、別に私にいたずらするつもりでは無く、ただ単に何度給食センターに電話を掛けても、毎回電話番号が全く似ても似つかない私の家に掛かってしまう被害者に過ぎないのだ。

それで私が困って電話局に電話をして苦情を言ったのだが、電話局側の対応は『そんな事は有り得ないし、聞いた事も無いし分からない。』などと困惑するばかりだ。

そしてこれがたった一度きりならまだ分かるのだが、私が学校の授業をさぼって部屋で寝ている時に、これがしょっちゅうあったのだ。

 

だがそれだけでは無い。電話に関して言えば、それ以前から私の家の電話は確実に盗聴されていたと思われる。

何故なら高校時代に一時期かなり長い期間私の家の電話は、とんでもない状態にあったのだ。

まず、普通ならば電話を切って受話器を置いてある通常の状態の時は、当たり前だが受話器を手に取らない限り何も音などしないはずである。

それなのに我が家の電話機は受話器を切って置いてある状態にも拘わらず、常にラジオか何か分からないが、何故か大音量で音楽が鳴っているのだ。

これではまるで電話機の形をしたラジオの様では無いか。

電話が外部に繋がっていない状態でさえ常にそんな状況なのだが、電話が繋がっている時などは、話し声よりも音楽の方が余りにもうるさくてほとんど電話を掛けている相手の声が聞き取れない程なのだ。

因みに念の為言っておくが、その音楽は、私が大好きな流行りのポップスなどでは勿論無い。それは全く知らない曲であり、大音量で部屋中に鳴り響き只々耳障りなだけである。

最初は私の家に電話を掛けて来る友人達は皆、私が部屋で音楽のボリュームを大音量にしていると思い、『何でそんなにボリューム上げて音楽を聞いてるのよ?この音楽がうるさすぎて声が全く聞き取れ無いから、いい加減に音楽のボリュームを下げてよ。』などと言うのだ。だが私が、部屋で音楽などつけて無いし、誰かにいたずらされて受話器の中で常に音楽が鳴ってる状態なのだと説明すると、皆驚き大笑いするのだ。それで私が、『これは本当に笑い事じゃないから。変質者がいたずらしてるの。こいつ完全に頭おかしいよね。』などと電話中に盗聴している者の悪口を話していると、私達が会話をしているのに、わざとガチャガチャガチャっとうるさく音をさせたり、音楽のボリュームを思いっきり上げてうるさくし、そこから更にエスカレートして、勝手に私と友人との電話を切り、無音状態にさせた事さえも何度もあるのだ。

そして一時間くらいたつと、受話器はまた相変わらず大音量の音楽は鳴っているが、無音状態は復活して直っているのだ。これではもう明らかに誰かのいたずら以外に考えられないでは無いか。

私の家に来た知人や友人達は皆、その大音量の音楽が鳴っている電話機を見て驚き呆れ、『これ電話機じゃなくて電話機の型をしたラジオでしょう。こんな電話機が有る訳無いもの。それか誰かがラジオに改造したんじゃない?一体どうやって電話機をラジオに改造するのか分からないけど。』と言う程なのだ。そこで私は、『まあ誰かがいたずらしたのは確実でしょう。マジでムカつくわ。【うるさくて声が聞こえ無いから。】ってみんなから電話をすぐに切られちゃうし、』と言っていたのだ。

それで結局しばらくしてから電話局の修理の人を呼びその電話機を見せたところ、『取り敢えず電話機を変えてみて下さい。それからこの電話機は調べましたが、恐らくこの電話機自体に何か仕掛けられているのでは無く、電柱や電線に仕掛けられている可能性が有りますね。でも電話局では電柱や電線などまで調べる事は出来ないんですよ。

取り敢えず、新しい電話機に変えて様子を見て下さい。』と言われたのだ。そして新しい電話機に変えると、ひとまず大音量の音楽は鳴り止んだのだ。

 

大学受験入試問題

 

それからもう一つ、実はかなり不可解な事があるのだ。私が通っていた学校は大学と付属の中学、高校があり、私は付属中学から入学していたのだが、その4年制の大学の方には付属の高校からは、当時何と6分の1程度しか進学出来なかったのだ。そして高校から無試験での推薦枠は、更にほんの僅かしか無かったのだ。そして通知表の5段階中、平均4.0以上出なければ推薦の枠にさえ入れなかったのだ。

そういう訳で、私も当然推薦の枠になど入れる訳も無く、一応大学受験をして系列の大学に進学をしたのであるが、私にはお茶の水女子大学に在学する優秀で品の良い家庭教師がいたのだが、その家庭教師からは主に英語を学んでいたのだ。

何故なら受験科目の内、国語は現代国語は小学生時代に勉強したおかげか、実力テストなどではいつも学年でトップの方だったので、あとは漢字や古文や、日本史などは、自分自身で暗記をする分野だったからだ。だが、高校2年の末まで全く勉強をしていなかった私は、英語の成績は非常に悪かったのだ。

そしてその私の家庭教師は、彼女の父親の仕事などは彼女が話さなかったのでよく知らないのだが、彼女は父親の仕事の関係で長い海外暮らしをしていた帰国子女なのだ。そしてお茶の水女子大学弓道部に所属していたのだ。

 

だが、その私の家庭教師は、私の英語の受験勉強を私に教えるにあたり、彼女が購入してきた極薄い英語構文のテキストたった一冊だけを集中的にやっていくと言うのだ。それと英単語の本を出来るだけ暗記するようにと言われたのである。

だが、私はどう見てもこの20ページくらいしか無いこんな薄いテキストだけで受験に挑もうとするのはいくら何でもおかしいのでは無いかと思ったのだ。

それにその薄っぺらい英語構文のテキストはそんなに極薄い上に1ページあたり2つの例文しか載っていないのである。あとはその例文についての説明だけだ。そしてそれは、そんな極薄のテキストなのに2000円くらいと、やけに強気の値段設定である。

本屋に行けば、もっと安価で内容がぎっしり詰まっているテキストや参考書などがいくらでもあるにも拘わらずである。いくら何でも、こんなに厚さも内容も薄そうでしかも値段が高いテキストなど、いったいこんなものをわざわざ選んで買う人などいるのだろうか?と思う程だ。

それで私が、『このテキストではあまりにも薄過ぎて内容が少ないので、他にも人気がある参考書やテキストを買おうと思います。』と家庭教師に言ったところ、その家庭教師は、『それは絶対に止めて。お願いだから私の事を信じてこのテキストの私の教えた所の復習をしっかりとやってこのテキストを完璧にマスターして。頼むから他のテキストなんて絶対に買わないで。』と、私が驚く程、悲痛な叫び声をあげたのだ。

そして『とにかくあなたは他のテキストやなんかは逆に一切やらなくていいし、あとは英単語さえ覚えれば受験対策はもう他には必要無いの。その代わり、とにかくこれだけを完璧に覚えれば絶対に大学に受かるって誓ってもいいから。このテキストはこんなに薄っぺらいテキストだし、これだけでは不安かも知れないけど、本当にこれ一冊でいい程のズバ抜けて優秀なテキストなの。だからこんなに薄いのにこんなに値段が高いのよ。それから私のヤマカンは凄く当たるし、今まで私はテストのヤマカンを外した事が一度も無いの。私はお茶の水女子大でさえヤマカンで現役で受かったんだから。本当は東大受験しようと思ってたんだけどね。でも東大でさえヤマカンが働く人が受かっているだけなの。これは本当よ。だから私にはあなたが受験する大学に出る問題も私のヤマカンでだいたい分かるのよ。それにあっちこっちのテキストに手を出してもどれも中途半端になってしまって絶対に覚え切れないから。だからとにかく頼むから、今までの人生で一度も外した事が無い私のヤマカンとこの優秀なテキストを信じてこのテキストにかけてみて。このテキストさえ完璧に覚えれば間違い無く大学には合格出来るって誓うから。私はね、あなたを絶対に大学に受からせないといけない義務があるの。』などと私に必死に言うのだ。

 

するとある日、いつも中間試験や期末試験で私と一緒に追試を受けている、早稲田大学の名誉教授の娘のOが、何と私と同じその薄っぺらい英語のテキストを学校に持って来ていたのだ。

Oはいつもテストの成績は学年で毎回後ろから10位以内だろう。そのOが、そのテキストと全く同じ私のテキストを見るやいなや、私のテキストを指を指して笑い転げたのだ。そしてOは、『嘘でしょう?何で?まさかあんたもこれ使ってるの?マジでウケるんだけど。これ使ってるのって、学年で絶対に私達だけだよね。だけどお父さんから、『英語の受験勉強はとにかくこれだけで絶対に大丈夫だから、受験勉強の英語はこのテキストだけを勉強して完璧に覚えろ。』って言われているしね、だから英語の受験勉強はこのテキストだけやっておけばもう大丈夫だよ。でもこれは私達だけの秘密だからね。絶対に他の人にこのテキストを勧めたり使わせたらだめだよ。』などと言ってきたのだ。

それで私は、『あのさあ、こんなペナペナな極薄で中身がほとんど無いテキストなのにこの値段じゃあ、私達がいくら勧めたところで誰も買う訳が無いじゃない。だってもっと安くて中身がぎっしり詰まっているテキストがいっぱい売ってるし、みんな一般的に売れてるテキストを使うでしょう。それなのに一体誰がこんなの買うのよ。それにまずどこに売ってるのこれ?まあどこかで売っててもまず誰も手に取らないし、買う訳も無いけど。だけど私の家庭教師が【これだけを完璧に覚えれば絶対に大学に受かるって保証するから。】って言い張ってて他のテキストは買っちゃだめだって言って他のテキストを使わせてくれないから仕方なくこれを使ってるんだけど。』と言ったのだ。するとOは、『そうだよね。私も同じ事を思ったけど。でも家庭教師がこの一冊を完璧に覚えれば合格を保証するとまで言ったんだ?実はうちのお父さんも、あんたの家庭教師と全く同じ事言ってたからさあ。いやあ、でも本当にビックリした、やっぱり本当なんだって。私も最初は信じられなかったから。だけど本当にこれだけを完璧に覚えれば大学受験には絶対に受かるってさ。うちの親が言ってるくらいだから絶対に大丈夫だよ。一応私の親は早稲田大学の教授だしね。私達はこれを使っているんだから、もう絶対に受験には受かるから。でもこれは本当に私達だけの秘密だからね。だから私は、このテキスト以外のテキストなんて絶対に買わないし、正直このテキスト以外の英語の勉強は一切やらないよ。だから他のテキストなんか買っても意味無いから止めた方がいいよ。何しろこれ使ってるのは私達だけなんだからさ。でもみんなこのテキスト見て、【何でこんなに値段が高くてショボいテキスト使ってるの?しかもそれだけしかテキスト使わないの?】って笑うからマジでウケるよね。これさえやってれば大学に受かるのにさあ。』と自信たっぷりに笑いながら言ったのだ。

そしてそれからはOは学校で私と偶然会う度に、唐突にはしゃぎ出し、『私達にはあのテキストが有るから無敵だよね。マジでウケるねー。』と毎回不敵な笑みを浮かべて私に言ってくる様になったのだ。

私は【全く能天気な人だなあ。こんな極薄でしかも内容の薄いテキストしかやらなくていいし、絶対に大丈夫だからなんて言われても私は不安でしょうが無いわ。しかも学校の生徒達からは私達は絶対に大学受験で落ちると思われているだろうし、そんな絶対に大学受験で落ちそうな私達が使っている馬鹿しか使わなそうな極薄の馬鹿高いテキストを、いくら皆に【このテキスト凄く良いらしいよ。】などと皆に勧めたところで、皆、余計に【あれだけは使わない様にしよう。】と思うだけだろう。全く秘密も何もあったもんじゃ無い。

だが、Oのお父さんは早稲田大学の名誉教授だし私の家庭教師と同じ事を言ってるんだったら、少しは信憑性が出てきたかも。でもそれにしてもOのお父さんも私の家庭教師も、一体何でこのテキストをやれば絶対に大学受験に受かるだなんて断定出来るんだろう?自分の娘を馬鹿だと思って、これ位薄いテキストじゃないと覚えられないと思って、色んなテキストをやって全部中途半端になるよりはまだ良いと思った可能性もあるなあ。それにしてもこのテキストは英語構文のテキストなのだ。これ一冊で受験に受かると言われても、大学受験のテストの過去問題集等を見ても英語の入試試験の全てが英語構文になる事など見た事も無いし、普通に考えたらまだ3割4割ならまだしも全部が全部、大学受験の英語の試験問題の全てが英語構文になるなんてまず有り得ないのに。それなのに何故私の家庭教師やOの父親はこの小学生の宿題である夏休みのドリルよりもはるかに薄っぺらいテキストだけを完璧に覚えれば大学受験に絶対に受かるなどと言い切れるのであろうか。まして私達が使っている英語構文のテキストの中から大学受験の英語のテストの全ての試験問題が出題されるだなんて、そんな馬鹿な事がある訳が無い。どう考えてもおかしい。

それにOも何故あんなに【このテキスト以外は絶対に一切やらないしやる訳が無い。】などとこんなマイナーで極薄のテキストを全面的に信用し安心しきっているのだろうか。Oは何しろ本当にこの極薄の1ページに例文が2題しか無いこの英語構文のみのこのテキスト以外は手をつける気など更々無いのだ。勿論長文読解のテキストや勉強なども全くやろうとしていないのだ。まあでも早稲田大学の教授である親からそう命じられているのならそれはそうせざるを得ないだろうけど、などと私は納得した。

とはいえ私はその不安は拭い切れず、勿論こっそりと人気があるテキストも購入していたのだ。

それで、家庭教師の授業で、その極薄の英語構文のテキストを終えた時に、空かさずその人気のある内容の濃いテキストを出したのだ。それは勿論【もっと良さそうなテキストを見つけましたよ。】とこれを見せれば家庭教師も【何だ、こんなに良さそうなテキストが売ってるんだ。】などと感心してそれらをテキストとして使用すると思ったからだ。

ところがその家庭教師は『何やってるの?このテキストが終わったらまた最初からおさらいして何度でも時間がある限りこのテキストを徹底的にやり直すの。その他に人気のあるテキストを勉強しようというあなたのその意欲は素晴らしい事だと思うけども、前にも他のテキストは必要無いし、このテキスト一本に賭けて、とにかくこのテキストを完璧に覚えれば受験には絶対に受かるって約束するからって言ったでしょう。本当に頼むから英単語とこのテキストだけを完璧に仕上げて頂戴。それだけで受験対策は完璧なのに何故わざわざ他の事をしようとするの?全く意味が分からない。』などと言われてしまい、その上『他のテキストや何かは全く要らないから全てしまって。そんなの本当に要らないから。』とピシャリと言われてしまったのだ。私はこれには非常にがっかりした。それにいくら何でも受験勉強をヤマカンだけに頼っていいのだろうか?仮に当たらなかったら一環の終わりでは無いか。どんな試験問題でも万全の体制を整えるなどはさらさら考えていないのだろうか。一体本当に私の家庭教師である彼女はこの極薄のテキストの中からテスト問題の全問、全てが出題されるなどと思っているのだろうか。しかも100%英語構文のみで構成されたテストが出題されるだなんて、本気で考えているのだろうか。

私の疑問はずっと消えなかった。

 


だが結局、私が入学する事になった学部の英語のテストは何と、全ての問題が英語構文のみで構成されていて、他のタイプ、例えば長文読解などの問題などは、ただの一つも無かったのだ。過去のテスト問題集などでもこんなにも全部が全部全てが英語構文のみで構成されたテストの回など唯の一度も見た事は無かった。それなのに何故か、その年のこの学部の英語の入試試験は全部が全部全ての試験問題が英語構文のみで、しかも更に驚愕した事には、出題された試験問題が、あの家庭教師から何度も繰り返し教えて貰ったあの極薄のテキストに掲載されていた例文から100%そっくりそのまま出題されていたのだ。というよりも私が使っていた極薄のテキストの1ページに2つの例文という内容の薄さからして、そのテキストのほぼほぼ全てが例外無くそのまんまこの英語の入試試験で出題されたといっていい。これは奇跡的な出来事だと言ってもいいくらいだ。

そうした訳で私は当然全ての問題がいとも簡単に回答出来たのだ。この分ではこの受験の英語のテストは恐らく満点では無いかと思った程だ。これには本当に驚いたし、その家庭教師のヤマカンが本当にそっくりそのまま当たったので心底驚いたのだ。

【まさか家庭教師のヤマカンがズバリ当たって、本当にあのテキストの中から例外無く、というか正に100%全てのテスト問題が出るだなんて、まさしく奇跡としか言い様が無い。これならいつも追試で一緒だった、私と同じテキストのみただ一冊を勉強していたあの早稲田大学の名誉教授の娘のOも受かったかも知れないなあ。】と思っていたら、何とやはり案の定、あのOも私と同じ学部の同じ学科に受かっていたのだ。

私とOは、受験後に学校で初めて二人で顔を合わせた時に、お互いに驚いて叫んでしまった。『うわあ、本当に私達二人共、同じ学部の同じ学科に受かったんだね。私このテストで満点だったんじゃないかと思ってる。だって全部あのテキストからテスト問題が出題されていたから本当に驚いたよね。私達あの変なショボいテキストを信じて本当に良かったね。』と言ったのだ。するとOは『ね、だから言ったじゃない。うちのお父さんがこのテキスト1冊だけで絶対に受験には受かるからとにかくこれだけをやりなさいって言ってたって。でもこの話はあんた以外の誰にも言って無いし、誰にも言っちゃいけなかったんだけどね。でもあんたがたまたまこの同じテキストを使ってたから驚いて言っちゃっただけで。私と同じテキストを使っている人がいた事自体、まさかと思ってビックリしたからさあ。しかもあんたもこのテキストだけをやれば受験で合格出来るからって言われたって聞いて、やっぱり本当なんだって確信したから。でも私達、本当にこのテキストを使ってて良かったね。』と言ったのだ。Oもお互いに同じ事を思っただろうが、私はいくら何でも毎回追試を受けているOがこの学部に受かる理由が無いと思っていたのだ。Oの父親もさすがは早稲田大学の名誉教授だけあるなあ。やはり私の家庭教師と同じで余程ヤマカンが鋭いのかも知れない。それとも日本の私大では一番レベルの高い大学の教授だしコネとかも有るのかも知れないけど、とも思った。【でもこんなに完璧にヤマカンが当たるだなんて。しかも全問例外無くこの極薄のテキストから、まさかそっくりそのまま出題されるなんて凄いとしか言い様が無いなあ。しかも入試試験問題の数が私達のテキストの全ての例文数に至るまでがほぼイコール、つまりそれ程例文が少なく全く無駄が無かったのにはさすがに驚くしか無い。】と改めて思った。

だがよくよく考えてみれば、いくら何でも私達のテキストがそっくりそのまま10%出題されるだなんて、そこまでの偶然なんてある訳が無いのではないだろうか。それにOのお父さんもこのテキスト以外の勉強をするなと言ってたではないか。ひょっとしたら私の家庭教師と早稲田大学の教授であるOの父親は英語の入試試験問題を知っていたのでは無いだろうか。

これは、やはり普通には有り得ない事だったのでは無いかと思っている。