超ウルトラスーパーAVアイドルプロダクション AV業界の頂点に立った男の真実の物語 35

とにかくもう、後戻りする事が決して出来ない以上、何が何でも新しく立ち上げた事務所を短期間で軌道に乗せなければならなかった。その為、私は松岡と毎日繰り返し、さながら俳優と監督になりきって私が書いた《 究極の超ウルトラスーパーAVアイドル王道マニュアル 》をシミュレートしたのだ。
私は一人で、そのマニュアルの脚本を書きそれを監督・演出し、さらに俳優として練習稽古に付き合うという、一人四役全てをこなす事となった。だがそうする事により、話し方1つとっても、どれだけ間が大事であるかが良く分かってくる。
強調して話さなければならない箇所は、ゆっくりと相手の目を見て大事なポイントを忘れさせないように、何度も念を押しながら話さなければならないのだという事が、松岡をプロデュースしてみてよく分かる。そして大事な箇所には、忘れない様に何十にもマルで囲んだり何度も繰り返して書いておいたり、蛍光ペンを引き、松岡が重要なポイントを話し忘れない様細かくチェックし、話し方から間合いまで全て詳細な説明を入れながら書いた。そしてそれをクイズ形式にしてテストしたり、質問をされた時の返答方法のQ&A集を使って徹底的に特訓を始めた。
そうしていてよく分かった事は、いくらマニュアルを読んでも、その全てを頭の中でも感覚的にも完全に理解出来るまでは、決して自分なりにアレンジしたりせず、マニュアル通りの台詞を舞台俳優の様に完璧に覚え、書いてある順番通りに話し、ただの一箇所でも忘れたり変えてはならないくらいに心得て置かなければ、自分の言葉とはならずに、何やら誰かに伝言を頼まれただけの子供のお使いの様になってしまい、絶対に話さなければならない大切なポイントでさえもいくつも忘れてしまい、焦点の見えない曖昧な意味をなさない話となってしまうのである。そしてそれどころかしどろもどろになり、馬鹿丸出しの様に見えてしまい、そうなってしまっては信頼を置けるどころの話ではない。
松岡は、《 ちょっと話す順番を変えたり、言葉が抜けてたって変わらないだろう。》などと言うのだが、私は、゛冗談じゃない。゛と、思う。
どの言葉が、それが何故大切なポイントとなる言葉であるのかさえも全く理解出来ていないのに、自分なりにアレンジしたり順番を変えて話したりすると、一つ大事な台詞を忘れると、ポロポロと沢山の決め台詞さえも忘れてしまい、それにより焦ってしまい、ポイントとなるここ一番の重要な台詞さえも忘れてしまう。また相手を気遣い、出来うる限りの最大限のケアをしなければならないのに、その為の大事な言葉さえをもかけ忘れ、ただの意味をなさない言葉の羅列となり、何を言いたいのか分からないどころか、相手に激怒されてしまうであろう、という様な事が、自分が書いたマニュアルを実際に予備校の講師の様に説明し、間合いや台詞の強弱などを細かく演出し、そして松岡が話す相手になりきってシミュレートをしてみてようやく分かったのである。
そして人にものを教える事が、どれほど根気が入り、骨が折れる作業なのかを初めて理解した。それがまさかこんなに大変な事だとは、実際に始めてみるまで分からなかったのである。これは非常に誤算であった。いったい何故、こう何度も繰り返し同じところで間違えたり、何も理解してないのにアレンジして話そうとしたりするのだろう。
こんな状態で本当に、 【メジャーなタレントだと絶対にバレない事を確約された上で、特殊な変装や整形をして、完全に全くの別人として同時にAV女優としても活動する というごく一部の限られた者達だけの秘密の特権】を行使し、メジャーとAVを自由に行き来する人達でAV業界が溢れて来る前に、事務所を軌道に乗せる事が出来るのであろうか。
そしてまた松岡は《 究極の超ウルトラスーパーAVアイドル王道マニュアル 》を実践し、AVアイドルプロダクションの頂点を目指さなければならないという固い決意を抱いている、そんな私の気持ちも露知らず、≪あー、分からなくなっちゃった≫といってすぐに話がストップしてしまう。
それをそのまま話続けると、いつも最後にはしどろもどろになり、《あー、もう分からないや。》っとなってしまうのだった。